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幕の間の出来事22: 《仕事歳時記》
 


2008年の幕開けに、香月泰男《仕事歳時記》をご紹介します。日常と家族を愛し、自分に厳しくあった画家の一年を小気味よく表現した文章です。

 

   〔正月〕年改まり余命いくばくもなしと思ひ、気のみあせり雑用につぶれる。〔二月・三月〕は月ではない。個展の追込みで心気共にいらいら、くしゃくしゃ。〔四月〕個展準備完了、発送。こんな仕事するのではなかつたのにと気抜けする月。〔五月〕個展のため上京。一年中で一番ゆつくり快適に仕事できるときに遊ぶは残念。それでやけ酒飲む。かつぱ上陸の月。〔六月〕やうやく我にもどり、仕事ぼつぼつの月。〔七月・八月〕気は若いのだが体力ともなはず、汗をふきふきの仕事もできず、子供や孫達のさわがしき声を聞くのみ。〔九月〕春からずい分なまけたな―と嘆声を出す月。〔十月〕何かと四囲の雑音耳に入る。これ秋声か。〔十一月〕やうやく天地我のモチーフにふさはしくなる。〔十二月〕年賀状作製。無駄多き月。

香月泰男 仕事歳時記 (「藝術新潮」1969年2月)より

 

 
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