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幕の間の出来事48: 長谷川潔
 


当館のこととはあまり関係がないのですが、村上春樹インタビュー集「夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです」の装丁に長谷川潔(1891−1980)の版画が使われていますね。

 

版画家・長谷川潔は、当時日本では未開拓であった銅版画の技術を学ぶために1919年、27歳の時に渡仏します。哲学・美学・美術史・数学など広い分野における造詣の深さと制作に対する完璧主義によって、長谷川潔しか表現できない作品を発表し続けました。

病気、戦争、生涯の伴侶ミシュリーヌの看護と決して楽な生活ではありませんでしたが、毅然とした姿勢で制作を続け、1966年にはフランス文化勲章を受賞します。

友人たちの協力もあって、日本でも作品を発表していましたが、渡仏してから再び故国・日本の地を踏むことは遂に一度もありませんでした。

 

「君は日本に戻るタイミングを見失ったりしてはいけないよ」

これが、フランスで交流のあった洋画家・小杉小二郎への長谷川潔からの最後の言葉だったそうです。

 

当時の芸術家たちの、ものをつくって生きていくことへの強い決意と寂しさのようなものを強く感じるエピソードの一つではないでしょうか。

 

 
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